2009年8月12日水曜日

ゴルの狩人 1 【HUNTERS OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの狩人
ジョン・ノーマン

1. リム(1)

「わたしは望まん」
サモスが競技盤から顔を上げて言った。
「北の森に旅立つことは」
  わたしは競技盤をじっと見つめ、慎重にウバルのタルン戦士をウバルの書記の6に据えた。
「危険だ」
サモスが言った。
「あなたが駒を動かす番だ」
わたしは言い、ゲームをじっと見守った。
  サモスはウバルのタルン戦士を槍兵で脅かし、ウバルの4にぐいと進めた。
「我々はお前が危険にさらされても関与しない」
サモスの口には微かな笑みが浮かんでいる。
「我々?」わたしは尋ねた。
「神官王とわたしだ」サモスが言った。
「もう神官王に仕える気はない」
「ああ、そうだな」サモスは言い、「タルン戦士を守れ」と付け加えた。
  天井が高く、高さがあり幅の狭い窓があるサモスの広間で、我々は競技をしていた。夜が更けていた。わたしの左後ろ上部の松明受けの中で、松明が燃えていた。赤と黄色の100の升目のある競技盤の上に影が揺らめく。重みの付いた駒は、競技盤の上で背が伸びたかのように、競技場の向こうへ炎から影を落としている。
  我々はタイルの床の上に足を組み、競技盤に向かっていた。
  奴隷娘の右足首にはめられた奴隷の鈴の乾いた音が右側からする。 
  サモスは青と黄色の奴隷商人のローブを着ていた。実際にカル港の第一奴隷商人であり、4人のウバルが失脚して以来、カル港で主権を持つ船長評議会の第一船長でもある。
わたしも船長評議会の一員の、カル港のボスク屋敷のボスクである。わたしはフルトの毛で織られた白いローブを着ていた。遥かアルから輸入され、トルの金の布でへりに飾りがついていて、商人の色だ。
しかしローブの下には、戦士の色の赤いチュニックを着ていた。
  部屋の片隅には、裸にされ後ろ手に枷(かせ)をかけられ、足首を短い鎖で繋ぎ止められ、首の周りには鍛造した重々しい鉄の輪をされた大きな男がひざまずいていた。
男のわずかに後ろに、兜をかぶりゴルの剣を脇に持った2人の衛兵が側を固めていた。
男の頭は数週間前に。2.5インチの筋に、頭の前から首の後ろまで剃られていた。
今は数週間経ったので、短い黒い毛がまた現れていた。
剃られた筋以外は、ぼさぼさの黒い髪だった。この男には力がある。まだ焼印は押されていないが奴隷だ。首輪がそう物語っている。
  競技盤の横には女が跪いている。短い透けた、緋色の奴隷のシルクをまとい、鍵のかかった首輪は黄色いエナメル。黒い瞳、黒い髪。
「おつぎしますか、ご主人様」
娘が尋ねた。
「パガをくれ」
サモスが競技盤をぼんやりと見つめながら言った。
「もらおう」わたしが言った。
奴隷の鈴をきらめかせ、娘が引っ込む。彼女が離れるにつれ、衛兵たちに側を固められた跪いた男の奴隷を素通りするのが見えた。彼女は奴隷娘らしく、すました態度で傲慢に、体であざけりを示して男を通り過ぎた。
  男の目に憤怒の光が走り、鎖の動く音がした。衛兵たちは男に注意を払わない。しっかりと繋ぎ止められているからだ。女は笑い、続いて自由な男にパガ酒を取ってきた。

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ゴルの狩人 登場人物 【HUNTERS OF GOR】

ボスク(タール・キャボット)
  反地球シリーズの主人公。
ゴルに連れて来られた地球人。
タール・キャボットの名を捨て、カル港の商人ボスクを名乗っている。

サモス
  カル港の奴隷商人。評議会のメンバーであり、有力者である。
実はそれは世を忍ぶ仮の姿で、神官王に仕えている。

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2009年8月11日火曜日

ゴルの狩人 目次 【HUNTERS OF GOR】

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