<反地球シリーズ>
ゴルの狩人
ジョン・ノーマン
1. リム(2)
「タルン戦士を守れ」サモスが言った。
その代わりに、わたしはウバルをウバルのタルン戦士の1にさっと進めた。
わたしはサモスの目を覗き込んだ。
サモスはまた競技版に目を向けた。
大きくて角ばった顔、短く刈り込んだ白髪、顔は太陽で浅黒くなり、風焼けと潮焼けしている。
耳には金の輪がついている。サモスは海賊であり、奴隷商人であり、達人の剣士であり、カル港の船長である。盤をじっと見ていた。
サモスはウバルのタルン戦士を槍兵で取らなかった。わたしを見上げてから、
彼の書記の1でホームストーンを守った。
そこは彼のウバルのタルン戦士の3を制御し、対角線を仕留めるところだ。
「タレーナは、アルのマルレヌスの娘は北の森に連れてゆかれ、奴隷になったと聞いた」
わたしが言った。
「その情報はどこで手に入れたんだ?」
サモスが聞いた。彼はいつも疑り深いのだ。
「わたしの屋敷にいた女奴隷だ。愛らしい娘さ。名はエリノア」
「あのエ=リ=ノアか。今はトレヴェのラスクの所有物の」
サモスがたずねる。
「そうだ」わたしは微笑んだ。「あの娘は金貨100枚になったよ」
「間違いなくその価値がある。トレヴェのラスクはその値段の1000倍は楽しめるだろう」
サモスは微笑んで言った。
わたしは微笑んだ。「そうだろうとも」
わたしは競技に注意力を戻しつつ言った。
「だが、あの二人の間にあるのは本当の愛なのだろうか」
「愛―――。女奴隷への愛?」サモスは笑って言った。
「パガはいかがですか、ご主人様?」
黒髪の娘がテーブルの脇にひざまずいて尋ねた。
サモスは娘のほうを見ず、ゴブレットを突き出した。娘がそれを満たす。
わたしもゴブレットを突き出し、わたしのも満たされた。
「下がれ」サモスが言った。
娘が下がった。
わたしは肩をすくめた。
「愛か否か」サモスは競技盤をじっと見ながら言った。
「ラスクは首輪に繋ぎ続けるんだろう。―――トレヴェの男だ」
「たぶん」わたしは認めた。それにサモスが言っていることが真理であろうと少しの疑いも持たなかった。トレヴェのラスクは彼女に惚れ、彼女もそうだとしても、何の権利も持たぬ完全なるゴルの女奴隷の身に彼女を置くだろう。―――トレヴェの男なのだから。
「トレヴェは価値ある敵と言われているな」サモスが言った。
わたしは何も答えなかった。
「コ=ロ=バの人々はしばしばそう感じている」
サモスが言った。
「わたしはカル港のボスクだ」
「その通りだ」サモスが言った。
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