<反地球シリーズ>
ゴルの狩人
ジョン・ノーマン
1. リム(4)
ちらりと部屋を見渡すと、数ヤード向こうにタイルの上で、簡素なシルクをまとい、両取っ手のついた銅のパガ壷の脇で、跪いた奴隷娘が命令を待っている。黒髪の美しい娘だ。女は鎖につながれた男を一瞥し、長い黒髪をかき上げた。男は手かせをかけられ跪き、衛兵に挟まれて女をじっと見つめていた。女はそれに気づき、馬鹿にしたように微笑んでから、退屈げにそっぽを向いた。手かせをかけられたこぶしが握られるのがわかった。
「テリマはどうする?」サモスが尋ねた。
「わかってくれるさ」
「情報が入った」サモスが言った。「今夜お前が屋敷を出た後を追うように、テリマは湿地に帰った」
わたしは飛び上がった。
よろめき、部屋がぐるぐるした。
「テリマはどうすると思ってたんだ?」サモスが尋ねる。
「なぜ言わなかった?」
わたしは叫んだ。
「言っていたらどうした?奴隷の輪をかけてソファに鎖で繋ぐか?」
カッとなってサモスを見た。
「テリマは誇り高い、高潔な女だ」
サモスが言う。
「わたしは、テリマを愛している---」
「ならば湿地に行き、探して来い」サモスが言う。
「き……北の森に行かなければならないんだ」わたしは口ごもった。
「建築士をウバラの書記の6へ」
木製の長いこまをわたしのほうに動かしながら、サモスが言った。
ホームストーンを守らなくては。
「選べ。どちらかを」サモスが言った。
なんということだ!たいまつの明かりの灯る広間を大またで歩くと、ローブがはためいた。石壁を何度も打った。テリマは理解しなかったのか?わたしがすべきことがわからないのか?わたしは精を出してカル港のボスク屋敷を築き上げてきた。この街で地位もある。ゴルで一番名誉な席に座る資格があり、うらやまれているんだ!商人であり船長のボスクの女であることがどんなに名誉なことか!それなのにわたしに背を向けるとは!テリマにはがっかりだ!生意気にもわたしを!ボスクを失望させた!湿地が何をしてくれるんだ!金も、宝石も、シルクも銀も、あふれる金貨も、えりすぐったワインも、使用人も奴隷も、安全なボスク屋敷も拒み、わびしい自由とヴォスク三角州の塩湿地の静寂を選んだ?
テリマはわたしが急いで後を追って、哀れっぽく戻ってくれと頼むと思ったのか?一度はわたしの伴侶となったタレーナが、惨めな緑の北の森で奴隷の鎖に繋がれていると言うのに!テリマの小細工など通用しない!
好きなだけ湿地に居させてやろうではないか。ボスク屋敷の門の前に戻り這いつくばって哀訴するんだ。飼いならされた小さなスリーンが、入れてくれと鼻を鳴らして引っかくように。連れ戻してもらうためにな!
でもわたしにはわかっていた。テリマは戻ってこない。
わたしはうめいた。
「どうするつもりだ?」サモスが言った。競技盤から顔は上げなかった。
「朝、北の森に立つ」
「テルシテスが船を作った。この世の果てまで航海できる」
「わたしは神官王には仕えていない」
わたしは毛織のローブで目をぬぐい、競技盤に戻った。
わたしのホームストーンは危機に直面していた。
それでもわたしはたくましく強いのだ。鋼をまとっている。わたしはボスクだ。かつては戦士だった。
「ホームストーンをウバルのタルン戦士の1へ」
わたしは言った。
サモスがわたしの代わりに動かした。
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訳者の言い訳と解説
テルシテスが過去に、なんという名前で訳されているのか忘れました。
確認して修正するかもしれません。
でも何に出てくるんだっけ。。。
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