<反地球シリーズ>
ゴルの狩人
ジョン・ノーマン
1. リム(5)
鎖につながれた、衛兵に両脇を固められている裸の男奴隷にあごをしゃくり、
「奴隷か?」とサモスに聞いた。
「こっちにつれて来い」
サモスが言った。
かぶとをかぶった二人の衛兵が、奴隷の腕を取ってこちらに引きずってきた。それからまたひざまずかせ、ぼさぼさの黒い髪を引っ張ってわたしたちのサンダルの前に頭をつかせた。
女奴隷が笑っている。
衛兵が奴隷の髪から手を離すと、姿勢をまっすぐにしてわたしたちを見た。
誇り高き男のようだ。気に入った。
「変わった床屋に行ってるんだな」
サモスが言った。
女奴隷が嬉しそうにまた笑った。
頭の前から首の後ろに筋を刈られている。北の森の女豹族に捕らえられ売られた証だ。男にとってもっとも恥ずべきは、女に隷属して所有され、飽きたら売られて金にされるということだ。
「弱虫で愚か者の、女奴隷同然の男が、女の奴隷に落ちると言われている」
そう言ったサモスを、男がぎらぎらした目で睨みつける。手かせをかけられたこぶしが、背中でまた握られるのが感じられた。
「わたしは一度は女の奴隷だった」
わたしが言うと、男は驚いてこちらを見上げた。
「お前をどうしようか?」
サモスが問う。
男の首の周りには、槌で打たれた重々しい鉄の首輪がされている。男の奴隷には珍しくないことだ。金床に頭を置かれ、叩いて首の周りに鉄を曲げたのだのだろう。
「お望みのままに」
男はわたしたちの前にひざまずいて言った。
「どうして奴隷になったんだ?」
わたしが聞くと、
「ご覧の通り、女の手に落ちたのです」
「どんな風に?」
「寝込み襲われ、のどにナイフを当てられて目が覚めました。鎖につながれ、もてあそばれ、飽きたら繋がれて手かせをかけられ、森の西の端との境界線、タッサの端の人気のない海岸に連れて行かれました」
「名の通った会合のポイントだ。わたしの船の一隻が彼らを拾った」
サモスが言い、男を見た。
「お前の値段を覚えているか?」
「鉄のナイフ2本と、鉄のやじり50個です」
男が答えた。
「それとアルの飴が一山」サモスが微笑む。
「そうです」
男は怒りに歯噛みしていた。
奴隷娘が手を叩いて笑っている。サモスは咎めなかった。
「お前の運命は?」サモスが尋ねた。
「当然ガレー船の奴隷だ」男が言った。
カル港、コス、テュロスの大商船や戦艦は、こんな何千人もの惨めな者を利用している。
煎じた豆と黒いパンを食わされ、並べて鎖につながれ、ご主人様の鞭の元で、摂食と鞭打ちと舟をこぐだけの人生だ。
「北の森で何をしていた?」
わたしは尋ねた。
「俺は無法者だ」
男は誇らしげに言った。
「お前は奴隷だ」
サモスが言った。
「そうです。奴隷です」
簡素なシルクをまとい、両取っ手のついた銅のパガ壷を持って立っている奴隷娘が、男を見下ろしている。
「北の森を通る旅行者はほとんどいない」
わたしが言った。
「普段は、俺は森の向こうで略奪する」男は奴隷娘を見た。「たまに、森の中でやる」
娘は赤くなった。
「俺が捕まったとき、運試しをしてたんだ」
男は言い、サモスを見た。
サモスは微笑んでいる。
「狩をしているのは自分だと思っていた。でも狩をしているのは女たちのほうだった」
娘が笑った。
男はいらだたしげに目をやった。
そして顔を上げ、
「ガレー船送りになるのはいつなんです?」と尋ねた。
「お前は強いし良い男だ」サモスが言った。「金持ち女が良い値をつけてくれるだろう」
男は怒りに大声を出し、足の鎖に抗おうとした。衛兵が男の髪をつかみ、また無理やり跪かせた。
サモスは娘に振り返り、
「この男をどうしようか?」と聞いた。
「女に売って!」と笑った。
男は鎖につながれもがいている。
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